/ehanov
 
木がひとつ燃え
(それは一時の風の音によって現され)
煤には種が
哄笑とともに運ばれて沈む、
森は親愛なる友として
暗黒がとぐろを巻く深い木々の先に
持つものも、持たざるものをも包みながら
(それは一時の風の音によって現され)
いつだって家の麓に温もりを与えていた
井戸に響く言葉を発する声の、
反射して梢をゆすぶる波は森のさざめきの
(遠くで、または浅くに)一翼を担う
街道に立ち並ぶ灯りを虫たちが泳ぎ
言葉から忘れられた工業地帯に響くmetal-perc.や
ホームになだれ込む群衆を呑みこむ地下鉄のmetal-perc.を
 遠くで、または浅くに、
 完全ではないという位相で、森は既に視る
口笛が枯れた、と呟く死者が森を視て安らぐように
(集合に、またはそうではなく)
いつだって、森は
いつだって家の麓に温もりを与えて後ろ姿を映す
ひとりのための開かれた足場に佇んで





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