千桜/黒木みーあ
のだ、と。
((( 桜の花びらがわたしたちの目の前をいくつも流れて、わたしたちはただ手を出して掴もうとしていた。幼い、子供のように。千桜は、わたし以上に酔っていて、いつの間にか瘡蓋だらけの腕を顔に当てながら、ちいさく嗚咽をもらして泣いていた。その隣でわたしは、わたしは何も言わずに、ただどこまでも先の見えない青空を、見つめていた。
――いつか、二人で死んだらまた、
一緒に花見しよ。
突然、振り向いて千桜が笑う。
いつの間にか泣いていたわたしの隣に座って、赤くただれたわたしの腕に手を当てて、そのまま何も言わず一緒に、ただ言葉を、失くしてくれた。
陽が落ちてから、夜が来ても、ただ傍で、ずっと。
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