借りた詩集 西條 八十全集/ふるる
 
歌をおもひだす。」という、なんとも切ない歌です。他に、全部を音読すると死んでしまうといわれる詩「トミノの地獄」の都市伝説もありますね。

ひとつの詩から抜粋いたします。

「年」

(略)

恋人よ、馬を下れ、
そこにわが壮麗な氷河がある、
そは夜に輝く水銀のランプ、書の無言の火打石である、
いざ、われらが秘めた匂いたかき花束を投げよう。
薔薇、百合、花薄荷、罌粟、金鳳花、
素馨、にほいあらせいとう・・・・・

私たちが涙しつつ投げる花束は
星のやう、火のやう、かぎりなく舞ひ、
夕日のなかに粉雪はちりみだれる。

(略)

(西條八十全集 第一巻 美しき喪
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