過去を抱く/はるな
 

バギーの中の透き通る瞳は
のぞきこむ母親の影に触れ
安堵の湿り気を帯びる

 かあさん
 私は覚えてはいないけど
 あのくらい幼いころには
 同じように覗きこんでくれたのでしょう?

私に愛情を与えた二本の腕のように
私の二本の腕は機能するのだろうか
その瞬間には獣のように本能だけで
守るべき小さなものを抱くのだろうか

 かあさん
 実った肉体は
 抱かれたように
 抱くためなのだと
 かあさん
 あなたの口から
 言ってくれませんか
 かあさん
 わたしがされたように
 あなたも抱けばいいのよと
 あなたの口から


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