過去を抱く/はるな
バギーの中の透き通る瞳は
のぞきこむ母親の影に触れ
安堵の湿り気を帯びる
かあさん
私は覚えてはいないけど
あのくらい幼いころには
同じように覗きこんでくれたのでしょう?
私に愛情を与えた二本の腕のように
私の二本の腕は機能するのだろうか
その瞬間には獣のように本能だけで
守るべき小さなものを抱くのだろうか
かあさん
実った肉体は
抱かれたように
抱くためなのだと
かあさん
あなたの口から
言ってくれませんか
かあさん
わたしがされたように
あなたも抱けばいいのよと
あなたの口から
戻る 編 削 Point(2)