過去を抱く/はるな
 
愛情は肉のかたまりのようです
二十をこえても十の少女のようだった脚を
愛情はたやすく女のそれに変えてしまった
胸にも腰にも腕にも愛情は柔らかく実って
腕のすき間から零れるような身体ではない

若い枝のような2本の脚が
滑稽なランドセルを背負い
深緑を泳いでいく

 かあさん
 私の脚があれほど頼りないころに
 そこに赤黒いあざをつくったのは
 過ぎた愛情によるものだったのでしょう?

検査薬の一本線は
私の人生にも一本の線を引くことになる
そして私を女性に変えたひとの人生にも
私の肉のかたまりはますます柔かくなり
これからいろいろなものを守る鎧になる


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