どうかね 君は/瀬崎 虎彦
うたを歌わなくなって陰影がわからなくなる
道端にすべて宇宙の残骸がおちているような
夕暮れまで秒読みを開始してアルミの屋根を
じっと眺めていた小国民少年少女一様に空へ
沈黙はもうだれもみない 愛さない ならば
ひかがみにとどまる慙愧の念を 打ち 捨て
窓の並びとははすかいの 寂しい 私の寓居
にヴィネガロンのように 凶悪な 幻を燈せ
クルルーンと飛行船を持ち上げるヘリウムの
軽さをみならって 口先ばかりで行動のない
気楽な人生も悪くないのだろう それでもだ
それでも やはり地に立ち重さを思いながら
ひとつひとつ仕事をこなしていく君の生き様
悪くはないと思うのだがね どうかね 君は
戻る 編 削 Point(4)