いつか王子様が来ない/海里
 
裏庭の姥薔薇婆(うばばらーば)は薔薇を愛している
薔薇のネームレス
薔薇のシノニム
薔薇という名前のピース
何もかも愛している

生殖器としての恋矢は
それはカタツムリたちの話
美しさを盾に矛に
促す水に促されて咲き誇る

カクテルを見つめていると酔いますよ
いいえ、あれはフレミングウェーブ
薔薇の中の数学とルバイヤート
風伯の美姫がジンと踊る

地平線下の星々を思うように
薔薇を思い続けている姥薔薇婆
花なる世界樹との逢瀬
恣意を越えて愛している

いつだったか遠い昔
ふらふらとやってきて求婚した人間の男なんかよりも
もし彼がどこかの王子様だったとしても
今でも
もっともっとずっとずっと
薔薇のほうを愛してる
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