少年と青年と飛行船/
塔野夏子
初夏の風がゆるやかに舞い込む白い部屋で
微睡む少年
本を読む青年
壁には無造作に留め付けられた
幾枚かのモノクロームの写真
天井から吊り下がるのは
模型の銀色の飛行船
窓近くの硝子花瓶には
青い矢車菊
そして窓の向こうの空遠く
模型とよく似た飛行船が浮かんでいるのを
二人とも知らない
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