影いろの世界/吉岡ペペロ
 
ワバタがヨシミから離れてヨシミの足もとにうずくまった
カワバタのからだが食卓のしたに消えた
そしてヨシミの足のゆびひとつひとつを口に入れた
ヨシミはそれをじぶんの影のように感じた

四月の六月、ヨシミはそうつぶやいた
四月に六月の影を見つけたユキオを思った
カワバタの影をユキオには知られたくない、いや、知らせたら可哀相だと思った刹那、カワバタに椅子から引きずり落とされたからか、愉楽からか、ユキオのことを考えていたことがばれたような気がしたからか、ヨシミは糸をひくような声をあげた
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