わたしの願い/はだいろ
 
子のネームには、
大橋と書いてあった。
大橋さん。
隣のテーブルのこどもが、
ひとみしりすることなく、笑いかけて、
大橋さんも、笑い返す。

なんて白い耳に、
わたしは舌をねじこみたいと思った。

もしも生まれ変わるなら、
わたしは、
大橋さんの、
彼氏として、
生まれ変わりたい。
この六十億の人類のなかで、
それでもたったひとり、
大橋さんの愛をつかむ人。


わたしの願いは、
その人として、
もういちど、生まれ変わることだ。

だれも見ない青春映画のなかの、
青春のゆめと心の傷に、
わたしは泣いた。
泣きながら、
もういちど、
もういちど、
生まれ変わることを、わたしじしんとして、
夢見ていた。
知らない、地方のまちで。



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