オレンジいろの汗/吉岡ペペロ
 
マのこと知ってたっけ
カワバタが可哀相に思えた
ジジジ、ジジジ、蝉が鳴いている
もうこんな川あきちゃったよ
ジジジ、ジジジ、お母さん、お母さん、
ジジジ、お母さんって幸せ?
お母さん、お母さん、あたしのこと好きだった?

ケイタイが鳴っていた
ヨシミは枕もとの充電中のケイタイを引きずりあげた
留守電のマークがある
カワバタからだと思った
カワバタからだった
目を閉じたまま留守電のアナウンスに聴き入った
時刻を告げ電子音のあとカワバタの声
ヨシミは暗闇のなかでそれを聴いていた
暗闇のむこうでお母さんがオレンジ色の作業服を着て振り返ってくれた
日に焼けた鼻から肉の厚いあごにかけて汗が流れていた
さっきまで見ていた夢をヨシミは思い出していた





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