いきものたちの銀河/吉岡ペペロ
オが背後から声だけになって
結婚するならヨシミがいいな、と言ったような気がした
木に花が咲くってふしぎだよ、桜を撮ってるのに空が写る、
おい、いまオレ相当なこと言ったんだけど、声だけのユキオがそう言ったような気がした
ありがとう、そうだね、
ヨシミはカワバタが可哀相に思えた
なぜいまそれはユキオではないのだろう
すべてが曖昧に思えた
あたしたちまだ曖昧だよ、
曖昧だから価値があるんだよ、
え、なんて?
こんなだいそれた約束は、曖昧だから、根拠がないから価値があるんだ、
ヨシミはユキオの根拠がないから価値がある、という文句を目と口のあいだで繰り返してみた
昨夜見た宇宙桜がヨシミのまえに広がった
桜花の川原にヨシミは立つようだった
月面基地に立つようだった
そこは立入禁止エリアでヨシミの影は照らされて四方八方に伸びていた
はんぶんの月の光が空にちぎれていた
あたしは根拠がないな、だから価値があるんだ、そう思った
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