「遠雷」/ベンジャミン
姿の無いものの気配がする
ガラス戸が小さくカタカタといって
何処か遠くの出来事を伝えようとしているのか
本当のことは良くわからない
日常の大部分は
そうやって解体されることなく消化される
ちょうど遠雷のように
それが自分をかすめることなく通り過ぎるなら
日常のほとんどは
そうやって消化されて吸収されることもない
姿の無いものの気配がする
ガラス戸が小さくカタカタといって
もしかしたら何処かの誰かの叫び声かもしれない
ちょうど遠雷のように
それが自分に近づいてくるかどうか
僕はそっとガラス戸に手をあてて
何か感じられないかを確かめようとするけれど
あまりに多くの出来事が僕をふるわせるから
つい怖くなって
その手をすぐにはなしてしまう
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