寄せる上げる潰す破裂/手乗川文鳥
 
められた母。手に取りカゴに入れてレジに通す。バーコード「ぎゅう。」
どこまでも。


いつか仔牛は牛になり、私は抱きとめることが出来なくなる。
仔牛は私の力の及ばない場所へ出ていこうとする。
荒野を行く仔牛。星空を目指す仔牛。私は引きずられながら、私と仔牛の旅路、いえ、仔牛と、私の。
私はやがて母でも私でもなくただの肉片となる、
雨に打たれて洗われる肉。太陽に焼かれる肉。腐っていく肉。
そして肉から悪臭となり汚れとなって、仔牛に染みついて離れられない。あの黒い斑点のどれかが、かつて私と呼ばれるものだった。
沁み一つ無い真白な乳を出すごとに、また少し濃い沁みとなって、
そうして仔牛は乳牛となった。
私と一切関係のない場所で。
抱かれていろよ、牛。





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