赤紙/伽茶
昼下がりのデイサービス
じっちゃんが起きてきた
暇さえあれば人の顔見てボソボソと話し
私の傷心に塩を塗りに来る
飽きたら違う人をみつけては
渡り鳥みたいに群れに加わる
今日、じっちゃんが振り向いて
笑いながらこう言った
『おまえ、あの男の事は戦死したことにしろっ』
私は笑って
すぐ隣のおばあさんにこう言った
『私の大事な人はお国のために命をかけて戦ったんです』
って
認知症のおばあさんはビックリして目がキョロキョロしている
それを見て
じっちゃんとまた笑った
『そうしたら…一人で相手を想っていても平気だろ?』
ボソボソっと言って
歩きながらまた違う群れに紛れて行った
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