透明人間/izumi
見える人間になっていますように。
何度も何度も心の中で繰り返して休んだ。
ぼくの願いは叶わない。世界って、地球って、世の中って、酷い酷いと思った。
ぼくはお気に入りの場所へ行った。
そこは誰もいない砂浜。誰かいたって1人だけど、ぼくだけの方が落ち着く。
その日は満月だった。海面に月の光が届き、海は嬉しそうに静かに眠ってた。
ぼくは、ぼくも一緒に寝たいと思った。
誰もいない海の中に、ぼくは入っていった。
ぼくも月の光に照らされて、淋しくも悲しくも苦しくも後悔も何もなかった。
一緒に眠れて安心した。
ぼくは後から知った。
透明人間は皆、最期は海に行くと。
あの日はぼく1人だけだったらしい。海が教えてくれた。
ぼくが寝る前に。
10.2.13
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