指先/ベンジャミン
 
小指の先が
少し内側に曲がっているのを
あなたは気にしているようでしたが

ペンを走らせるとき
他の指から少し離れているのが
文字のかわりに飛び跳ねているみたいで
好きでした

あなたの指先には
いつも淋しさがあるようで
何かに触れていないと不安そうでしたから
何でもいいから書くようにと
ペンを握らせたのでした

あなたの書く言葉は
あなたの指先のように繊細で
あなたの書く言葉は
あなたの指先のように
どこか淋しい気がしました

ずっと指先を見ていたのは
本当はそこしか見れなかったからだと
後になって気づきました

あなたの指先が
どこか淋しく感じられたのも
ただ自分の中の淋しさを見つめていたのだと

あなたが最後に書いた
「さよなら」という言葉を見て
ようやく気づくことができましたが

それはもう
伝えることができませんでした
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