ゆるやかに/大覚アキラ
 
足を運ばなくなった
この街のことを
おれは
ゆるやかにわすれていく

あの店の名前も

あの店のバーテンの人懐っこい笑顔も

苦手なアルコールのせいで赤くなった頬も

明かりの消えた人気のないアーケードも

冬の空気で冷え切ったブレスレットの冷たさも

風にかき消える煙草の煙も

繋いだ手の暖かさも

こうやって
ゆるやかにわすれていくのだ

なにもかも
ゆるやかにわすれていくのだ

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