雨やどり/草野春心
 



  みじかい夕立が降って、
  シャッターのおりた中華屋の
  軒下にかくれた。
  けれども
  何事もなかったように
  傘をささないひとびとが、
  ぼくを嗤って過ぎて行った。



  去年の六月、
  都合のいい言葉できみは
  ぼくの思いを
  踏んづけて行った。
  やがて
  何事もなかったように
  きたならしいその肉体で、
  きたならしい子どもを産むんだろう?



  まもなく雨がやんで、
  軒下から這い出たぼくは、
  空を見上げた。
  そこから
  何事もなかったように
  月の夜がぶしゅりと吹き出し、
  目にうつるすべては
  うつろな光におぼれていった。




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