真夜中、もやのように消えた昨日までとハエトリグモの文学性に関する考察/ホロウ・シカエルボク
 
屋の窓から二階のヴェランダまで降りたりする瞬間には
きっと
なんらかの文学的な感覚に包まれているんだと思うよ
誰だったかそういう高揚感のことをバタフライ・ナイツって言ってたな」


それはたぶんデビッドボウイが言ってたんだ

俺は教えてやる
ハエトリグモはため息をついて
そうか
アンガトヨ
と言って
俺のもとを去る


俺は
天井を見つめながら
クモが尻から糸を吐いて降下するときに
なんらかの文学的な感覚に包まれているのだということについてしばらく考えた
糸が出る尻
糸が出る尻は
文学的というよりは
詩的というべきかもしれない
だけどそれは
誰にでも通じる話ではないだろう

少なくとも俺は
尻から糸を吐くように
詩を生んできたのだと
そこには
妙な確信があった
俺は目を閉じた
眠るつもりはなかったのに
次に目を開いたら
世界は
朝になっていた



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