日本橋浜町のひと/恋月 ぴの
 
因果応報とやら訳知り顔では片付けられない
機会を得て面と向かい合ったとしたら当たり障りの無い近況報告と
彼女の口から出た謝罪らしきことばの端々に拭いきれない苛立ちを覚え

お嬢さんのこと、同情しきれない私がいる

深酔いした和夫さんがふと漏らした美佐江さんの秘密
はじめて夜をともにしたときには下腹部の暗がりにピアスしていて
小振りな鈴なら赤い糸で結わえ付けることもできたのだとか

お産の際には外していたのだろうけど

ちりりん

かすかに響く鈴の音に思わずフレアスカートの前を押さえてみても
している筈も無いピアスの穢れた違和感と

ちりりりん

何ゆえにか私のこころを弄ぶ




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