夜の半身/黒木みーあ
 



、筆を止める
月明かりにはまあるく
背中はやがて
丸まっていく

半身歩行
夜の夢遊

浅い眠りからは
気体だけが抜けていき
いつからかわたしは
人でない


薄曇りの中を
横断していく風の
辿りつく場所へ
馳せる思いの所在は
未だ、知らない

幼かった頃は
振り向ける程にすぐそばで
わたしの腕を引きちぎる

半身が
見当たらず
絶えず感覚だけが
ふるえている


耳鳴り
のような
わたしの声が
ただ ただ
眠りをうたっている
眠れない夜を


筆が止まる
はたと
風は止んだまま

ずっと
見上げている
月明かりにはまあるく
透けている

暗黒の
星の、半円


午前
零時二十分
一切の音が
地に
落ちていくように
明かりが消える

眠りを
夢見る
ことはなく、





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