動物の定義/葉leaf
一枚ある。そこには彼女とその友人が写っていた。友人は山羊の子供を抱いていた。二人とも十歳くらいだった。その友人の図は、彼女に記憶の遠近のきざはしをひらめかせ、彼女にもはや届かない友情の残響を集めさせ、彼女を物体のように併存する現在と過去との挟撃に刻ませた。彼女の家では昔山羊を飼っていて、その仔を業者に売ることがあったのだ。
その友人は最近死んだ。乳癌だった。四十歳。ずっと音信不通だったが彼女は線香をあげに行った。そのときアルバムの中から見つけ出したのがこの写真である。
「この写真から、私の命も彼女の命も山羊の命も、それぞれ別々に、因果と因果のこすれる緯度での自由を浴びたり、痛苦と慰撫との楕
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