五月の流れる水の上で/オイタル
開閉のたびに
ぼくとネズミが入れ替わる
ぼくは気付かれない 不在の形
だれもがぼくのことを忘れている
晴れた朝
ぼくを
風が通り
カナブンが通り(ネズミが騒ぐ)
昨夜の泣き顔を落とした娘の
切りそろえた髪がハープのように鳴らされて
やがての夜に
僕が消え 窓が現れる
ネズミの窓が
秋
夕空を切る蝙蝠の軌跡
一瞬のぼく
どうかな
そして 冬が来て
ぼくは還っていく
ねことか
とりとか
もう一度の
未生の海とかへと
五月の流れる水の上で
生まれ変わったら
何になりたいと聞かれた
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