五月の流れる水の上で/オイタル
五月の橋の上で
生まれ変わったら
何になりたいと聞かれた
ねことか
とりとか
雨の日の林の中の
きのこ
なんてどうかなあ
ぷつぷつとうたうたう
春の腐植の土たち
立ち上がろうとする
暁の獣の足跡たち
見上げると小さく
空に枝々
その一本のことさら薄暗いやつの先から
雨粒がゆっくり迫ってくる
それまでの間に
黄色い襟足を細々掃除して
おとといの夢の人を思いめぐらして
それからくしゃみをすばやくひとつ
そして頭上に
雨粒が冠をつくってはじける
開いた夏の窓
なんてどうだろう
閉じた窓がネズミの生まれ変わりで
(ぼくが踏みつぶした 例の)
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