鉄格子の中で/デラシネ
友はなく親はなく愛した男は幻で
言葉は誰にも通じない
叫び出せば注射を打たれて
硬いベッドに縛られる
最後に私の魂が バチンと潰れる音を聞いた
床に落ちた虫けらのように 唸る
まだ唸る
唸る
唸るのは
私が苦しんでいるのではなく
遠い地に預けられた娘の苦しみ
涙もでないほどに泣けてくるのは
遠い地で私を恋しがる娘の涙
抱きしめたい
言葉を失くした私とまだ字の読めない娘
唸り叫びだしそうな胸を押さえ
鉄格子の中で
やっと借りれた黒鉛筆を握りしめ 描く花
「これはおまえに似ている どうか笑って」
小さな茶封筒に詰めこんで送る
きっとあのばばあが捨ててしまうだろう
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