分娩室/草野春心
 


  きみの部屋は
  病室のような匂いがした
  八月も十二月も
  おなじような匂いがした
  気の遠くなるほどたくさんの
  交わりの匂いがした
  病室の匂いがした
  だれか髪の長い女が
  たったいま分娩を終えたような



  うんざりしてぼくはきみを脱がせた



  ぼくではないだれかと
  やがてきみは交わるだろう
  そしてみにくく孕むのだろう
  したり顔で



  「そんなもの、野菜室の
   ラップに包んだキャベツと同じさ。」



  「母親になる資格がきみにあるのかい?
   生まれてくる資格が
 
[次のページ]
戻る   Point(2)