ワイン/はるな
冬と春が
「もうさすがにいきますね」
と
手をつないで別れを告げにきたので
ああそういうことかと合点して
餞別にと毛布を渡した
それがおとといの晩
その夜が明けるころから雨が降り
箪笥のおくからカーデガンを出し
それでも床が冷える
うちに毛布はもう無いので
冷えるしかないのだ
それがきのうの晩
今朝になってわたしは気がついた
ああ
夏が春に恋をしているのだ
だけどどんなに冷え込んだって
桜は葉をつけ つつじが終わってからでは
春は到底もどってこないよ
と
百年遅れの慰めを夏に言ってみても
夏は返事をしない
わたしは床の暖を必要としてい
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