済州島4・3事件へのオマージュ/はらだよしひろ
 
  隔てれば遠くなるのでしょうか
  確かに幼子は海辺遊びを
  憶い出します

  その頃
  銃弾で命を奪われた
  腐乱の進んだ死体達が
  幾重にも土の中に放り込まれたといいます

  でも
  銃など目にしたことは無いのだといいます

  今 埋めた穴はアスファルトで塞がれ
  その上を旅客機が滑走するのです

  旅客機の中は喜怒哀楽に満ちていましたが
  もう 既に白骨化したであろう
  多くの名を持つ人に
  祈りを捧げる人は いませんでした

  どれだけ遠くなったのでしょう

  老は口を閉ざしたままでした
  開けば溢れんばかりの
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