100円玉/izumi
と心の中で言った。
心の中で。
ぼくだって分かってる。分かってるって信じたい。
ぼくも、その人も何も間違ったことはしていないって。
でも、ぼくは恥ずかしい。それがみんなに分かってしまうことが。
だから、言わない。
100円玉はあっけなく、ぼくの手のひらに戻る。
そして財布の中へ。
知らないうちに100円玉はいなかった。
多分どこかで使ったんだろう。
狭く暗い誰かの財布の中に今も入っているのか。
どうか、あの時の冒険を忘れないでほしい。
10.2.8
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