乾き/草野春心
 


  ひからびた
  老いた女の体を抱いた
  そのいのちは
  すっぱい匂いがした



  新聞紙をまるめたような
  ちいさなかたまりを
  ぼくはしばらく
  もて余した



  こびりついた嫉妬と
  甘ったるい
  かけひきの重みで
  そのいのちは
  どこかへ沈んでゆくところだった



  昔、ぼくと愛しあい
  最後にぼくを嘲った女のことを
  うすぼんやりと思い出した



  ぼくの知らない感情は
  なにひとつなかった
  目を凝らすと
  そのいのちは
  さまざまなかたちの乾きでつくられていた




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