乾き/
草野春心
ひからびた
老いた女の体を抱いた
そのいのちは
すっぱい匂いがした
新聞紙をまるめたような
ちいさなかたまりを
ぼくはしばらく
もて余した
こびりついた嫉妬と
甘ったるい
かけひきの重みで
そのいのちは
どこかへ沈んでゆくところだった
昔、ぼくと愛しあい
最後にぼくを嘲った女のことを
うすぼんやりと思い出した
ぼくの知らない感情は
なにひとつなかった
目を凝らすと
そのいのちは
さまざまなかたちの乾きでつくられていた
戻る
編
削
Point
(1)