何者かの足音が/Million mirrors
何者かの足音が君の耳に届いている
君は空耳だと思う
不安な風が頬に触れる
君は錯覚だと思う
ある日子どもが水に落ち
誰も気づかない
最後の吐息が泡となり
水面でかすかな破裂音を立てる
睡蓮の花が咲く音に似ている
君は睡蓮だと思う
子どもは川底に沈み
君は水辺を立ち去る
何者かが津波のように
君の周囲に押し寄せ
一帯の景色を変える
君の見知った風景を
君は独りで荒れ野に立ち
いつの間にかいなくなった子どもを
寂しさと共に思い出す
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