お花茶屋のひと/恋月 ぴの
 
ひとがひとり亡くなっているんですよ!

不謹慎なの判ってはいるんだけど
鑑識のひとが部屋に出入りしていたりするのに
向かいの高級マンションに住む奥様達はこちらの様子を窺うでもなく
普段どおりの世間話に興じていて
思わず叫んでしまいたくなるほどの日常がそこにあった

彼に連れられはじめて訪れたお花茶屋駅
上りホーム最後尾には「行商専用車」とかの表示されていて
鉄路は遥か昭和の彼方へと続いているんだなとつくづく思ってしまう

改札を出れば私鉄沿線の小規模な駅にありがちな街並みが広がり
昼下がりの駅前商店街は買い物客でそこそこの賑わいをみせ
今は暗渠となっている曳船川の親水公
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