poetarot(魔術師のカード)保存版/みつべえ
いっしんに。風のうら、おもてを。読みふける、その耳もとで。そっと、あなたは。しんじつの、名を告げた。薔薇のしたで。わたしの蹉跌、わたしの封印。わたしの、ふるさと。
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宝石の、瑕に。白く、たおやかな。指を、突き入れて。あなたは、朝をひらく。うまれたての、鳥のかたちの。ことばを呼びだして、空へ放つ。それが、いちにちの、はじまり。
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その声は、五線譜に。とどまることなく、軽やかに跳ねる。樹木よりも、尖塔よりも。ときとして、禁断の高みまで。その声に、操られて。わたしは、踊りつづける。死ぬまで。
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あなたは、世界の鍵を。漏洩している。やわらかい、鏡面に沿って。したたる、蜜の単純命題。わたしたちは、たがいを。映し合う、関係のなかでしか。孤独でいられない。
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うつむいたまま、それでも。歌を、うたっていた。悩みが、ふかいほど、あたらしく。ながい、なみだの隧道をぬけて。いま、あなたが、顔をあげる。アポロンの表情で。太陽を宣言する。
(https://twitter.com /poetarot)
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