夏のゆらぎ/ベンジャミン
 
遠くの景色が色あせて見えるのは
きっと目の錯覚ではないのだと
あなたは言う

僕はその意味がわからなくて
朝から晩まで遠くの景色を眺め続けた

そうやっているうちに
五月が終わろうとしている

僕はそんな移ろいにも気づかずに
朝から晩まで遠くの景色を眺め続けた

五月がそうやって終わろうとするのと
それをただ眺めている僕を見て
あなたは言う

遠くの景色が色あせて見えるのは
きっと目の錯覚ではないと

まるで自然と一体になれたなら
まるで自然の一部のように感じられることが
言葉でならべられるほど容易ではないと
たぶんお互いが知っている

けれど
あなたは確かな口ぶりで
そっと笑みさえ浮かべながら言う

そうやっていつの間にか
くっきりと鮮明になるまで
ゆらゆらとゆらいで見える夏が

音も無く近づいているだけなのだと
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