中身/豊原瑞穂
ンと合わせがあった。僕はその友達を居酒屋に誘ってベロンベロンに酔わせ、チャンスとばかりにそのボタンを外してみた。しかしそこでも何もない空間しか見ることが出来なかった。
人だけではなかった。
電信柱にはファスナーが付いていた。道路には無数のホッチキスが打ち込まれていた。壁には紙の様に「切り取り線」が書かれていた。
その全てを開き、その全てを覗き込んでみたが、その全てが無の空間だった。
『この世の全ては表面だけで出来ている』
そう思えるようになった時には、僕は周りの全てが信じられなくなっていた。物は形を作るだけで成り立っている、人は上辺だけで他人と付き合っている。そう
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