ニコライ堂 ー五月の朝ー/……とある蛙
新緑の季節
五月の朝の陽光を浴びた
ニコライ堂 緑青に覆われたドーム屋根
明るい陽光に
くっきりとした陰影を残した
コンドルの遺産は
一二〇年経った今日も
聖橋から靖国通りに向かう坂
毎朝降りて行く我々を見下ろしている。
五月の陽光は街路樹の
若葉の透間から
歩道を歩く我々に降り注ぐ
鐘楼の鐘は
まだ鳴っていない
その鐘の音は往時の人々に
異国の朝を想わせたのだろうか
僥倖にもその音を聞いた時我々は
昔日のモダーンを想うのみで。
が
今うきうきとした気分で坂を下り
もう颯爽とはいかないが
歩くリズムに淀みは無い
今日もまた生きている
一日が始まる。
明日もまた生きて行けそうだ。
ん
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