季節ごとに近しくなるものもの/吉田ぐんじょう
で喧嘩するカップル、生乾きのデニムスカート、遠くから聞こえてくる踏切の音、階段、影法師、神社、
(秋)
公園のベンチ、カーディガン、読みかけの本、煮干し、証明写真、新宿紀伊国屋、庭の錆びた三輪車、住宅街、携帯電話、罫線の細いキャンパスノート、一瞬の寂しさ、アクリル毛布、ベレー帽、さびれたスナック、悪夢、電車の時刻表、死に遅れた蝉、緑色の公衆電話、2Hの濃さのシャーペンの芯、鞄の底から出てくる印字のうすくなったレシート、おさまらない空腹感、
(冬)
画数の多い漢字、黒髪、煙突、東京タワー、肋骨、アスファルト、かけうどん、パイプ椅子、東京メトロ、放課後、夕暮れのコンビニ、映画館、学生証、インスタントラーメン、スターバックスコーヒーの紙袋、温泉に猿が浸かっているニュース映像、二階建てのアパート、ふと感じる気配、視線、深呼吸、静謐、サイレン、書き終らない手紙。
戻る 編 削 Point(8)