箱舟を造るものはないか/
瀬崎 虎彦
木漏れ日を愛したひと
放課後の教室にいた
四時間目の途中から雨が降り始め
沈黙は細かく裂けて騒音になる
グラウンドは海のようになって
自分が十代の形をしている違和感を
いつまでも練り上げていく粘土だった
うつくしい木漏れ日はどこへいってしまったか
髪の先まではりつめた注意が
今このひとと別れてはいけないと
サイレンを鳴らしていたので
わたしはいつまでも
雨を眺めていたのだった
箱舟を造るものはないか
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