書物の家/あおば
 
第にスピードを上げ
左右に車体を揺すり
鉄橋に向かって
大きくカーブを切る
その頃には図体の大きいのもしっかりと席を確保したので
蒸籠は前よりも窮屈になったのだが
大きく揺れるのが面白いのか
鉄橋からの景色が気に入ったのか
饅頭は
眠ったように静かになった

駅前の書店に飛び込むと
顔見知りの人たちが
新刊書を手にレジで列を作っている
待たされるのが嫌だと顔に書いてある
ここでも饅頭をおひとつ如何ですかとは切り出しにくく
店の外で
みんなが出て来るのを待つ








「poenique」の「即興ゴルコンダ」投稿作。タイトルは、小川 葉さん。



戻る   Point(13)