『実家』/東雲 李葉
 
てスプーンとフォークで交互に叩いて、まだかまだかと子供のような父。
弟はそう。カレーがとっても好きだった。

三角形のテーブルは互いの顔がよく見える。
母はさっきからスプーンで十字を切っている。
乾燥機はあと5分で止まるようだ。
父は犬のように皿にかぶりつき真っ赤な舌を必死に動かす。
私、は。
カレーがあまり好きではない。

乾燥機が止まった。
皺枯れた母の首を取り出す。
本当に母のものか分からないが。
「晩飯はまだか」と叫ぶ父に私の皿をそのまま寄越した。
空腹に耐えかねて冷蔵庫を開ける、と。
ゆりかごで眠る幼い弟。

四角いテーブル捨てられて、
彼と彼女ともう一人。
誰が消えれば丸くなる。
私はお家の場所も知らない。
電話のベルが鳴っている。
私の名前は何だっけ。

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