クリームシチュー/________
 




五時のサイレンが鳴ったら
みなさんおうちへ帰りましょう

わざとゆっくり歩いて帰る
うちに着くと
やかましいリビングを通り抜けて
疲れきった階段を上がり
自分の部屋に向かう
電気よりも先に
ラジオをつけて
ボリュームを上げる

毎日成長しているわたしは
この世界で
ばかみたいに小さい

恋愛の先が結婚で
結婚の続きがこんななら
わたしはそんなもの要らないって、泣いてた


だけどねえ
お母さんのクリームシチューには
ウインナーが入っててね
スプーンの上で転がって
テーブルに落として
「馬鹿だなあ」ってお父さんに笑われて

だけどねえ
どこにでも着いてきて
なんでも真似する妹を
わたし怒って嫌がって
「お姉ちゃんでしょ」って言われて
でもほんとはちょっとだけ誇らしかった


そんな、
まるで幸せ、らしい日々は
確かにあった
なかったことにはできないので

いやだなあ
もうなんだかさ
なんだか
ずっとずっと苦しいよ







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