散文詩-彼方に寄せて/黒木みーあ
こうを見つめていました。
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冬になると、一枚板の壁の隙間からは、聞いたことのある遠い声が、風のようにひゅるると聞こえ、いつまで経っても、身体の中から出ていくことがない。目を、閉じたまま眠れない夜には、くりかえされる意識の反転に、かがり火のような外灯が道々を、細い一本の線で繋げていく。音が、一時失われ、歩いていく意識の中では、夜はどんどんと落ちていくように、空には数え切れない星が瞬いている。そのひとつを手に取れば、遠く、振り返ればわたしはひとりで、枝分かれしていく火飛沫の先を見つめている。まばたきの一瞬にはいつも、押しつぶされそうな光粒が視界を埋める。向こう側では、相変わらずわたしの半身が手を振っている。どこか、わたしの知らない遠い所で、わたしの行けなかった遠い所で、ちいさく手を振りながら、わたしのことを見つめている。
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