思い起こさせるもの(1)/385
二階建て文化住宅の
一階の端に住んでいた
雨の日は軒下で遊ぶ
家中の傘を持ち出して
白い塗装の 錆びきってぼろぼろの
鉄階段を カツンカツンとのぼっていく
赤い無地の
カサカサ音がする素材の傘が
なぜかたくさんあったので
ドームの中は赤色にそまる
子どもの身体ひとつ入る空間の真ん中で
ひとりで三角ずわりしている
傘の枝が邪魔をするので
意外と狭いのだ
雨の音だけがして
何を想像していたのかは覚えていないけど
その遊びをするときは一人だった
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