夜舟/
 
あたし
もうわすれはじめている
あなたのこと
おもいだすのは
決まって夜の淵
塞げないままの場所
まだひんやりとして
居心地がいいの?
とうになくしたゆびを
いたずらにほしがって
あたしはまぼろしを
かさねすぎたようです
なにひとつ
かたちはないけれど
喩えばあたしは
夜の淵を漕いでいます
ここはひんやりとして
居心地がいいの

手紙は途中までも
書き切れずに
唯一の形となりました
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