行灯/たもつ
 
 
 
ぼくのタクシーが壊れてしまった
だからもう、ぼくはタクシーに乗れない
朝食の後、歯を磨いていると
血のような味がして
吐き出すとやはり血だったので
歯槽膿漏か何かかと思い
壊れたタクシーは埋めることにした

タクシー一台分の穴を掘るのは
さすがに大変だったけれど
途中から兄が手伝ってくれたので
だいぶ楽になった
ぼくに兄がいる、という話は
むかし両親から聞いたことがあった
こうして本当に兄が現れると
それはあまり特別なことではなかった

何度か休憩し
お腹が空いた時は蕎麦屋などにも行った
穴を掘り終え、土をかけていった
こういうときは惜別の言葉を
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