黒猫は ー猫三題めー/……とある蛙
食事を邪魔された黒猫は
あんぐり口を開け、あらぬ方向を眺めた。
何かが見えるようだが、
飼主に頭を撫でられ、首を大きく伸ばした。
彼女は飼主が好きなのだ
視線を合わせたままにゃーとなく。
彼女の食事はその後継続されることは無く
そのまま、箪笥の上に逃げ出した。
彼女の跳躍は飽くまでも軽やかで
無駄な力は一切入っていない。
無駄な高さまで跳躍しないという余裕がある。
そして、箪笥の上から顔だけ出して
飼主を見下ろしながらにゃーとなく。
黒猫の視線の先にいる飼主は
黒猫に媚を売るため、彼女のために削り節を用意し
箪笥の縁(へり)から顔を出す猫の
小さな頭を乱暴に撫でるのだ。
そのとき喜びながら黒猫は
前肢を飼い主の腕に絡めて
手のひらを甘噛みし
そして、後ろ肢で飼い主の腕に
キックを繰り返すのだった。
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