夜めぐる夜 ?/木立 悟
速さを速さに過ぎる文字が
すべてすべて骸骨に去る
平らな井戸よ
容れものの子よ
二重の息や光の帯
朝へゆく朝 止めもせず
ただ見送ればその先に
二重の雨のひとしきり降る
火をくぐり 火をまとい
やがて火となる青や白
荒ぶる手
鎮める手
袖と明滅
譜でできた旗
つまびくひとり
広い ひとり
息の白さ 闇の白さ
風が風を切りながら
切られるように顔をしかめ
道へと沈む白を歩む
焼けた壁を影は下り
やがて土に着き去ってゆく
交わらず点る灯の先に
空へ鳴る音は残される
巨きなひとつの白を忘れ
満ちる無音を見つめている
ところどころ無色の静けさ
目覚める前に立っていた場所
とらえどころのないくぐもり
先へ先へとどかない橋
ひとりにひとつの夜の手のひら
水のかたちに集いつづける
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