こがね/木立 悟
 


夜をひらく火のように
あなたがひとりひらかれるたび
わたしもまたひらかれます
冷たい湖の前で
空をわたる音の前で
野を分ける火のように


あなたが放った色として
わたしはひとりそこに立ちます
はじめて喚ばれた幼い夜に
新しくわたしは生まれたのです


ひらくようにひらかれる火
手から手へと伝わる冷たさ
いたましさをつつむいたましさを
つつむことのできるただひとつの冷たさ


川の行方の光をすくう
淡く冷たい手のなかに
あるときわたしは生まれたのです




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